CAS選択規則

1999-11-14

CASにおける名称の選択

決定に至るまで以下の規則を順に適用する。

(a) （優先順位が最も高い）主基を最も多く表現できる母体を選ぶ。
(b) 優先性の高いヘテロ原子を含む骨格を化合物クラスの順に選択する。すなわち次の順でヘテロ元素を優先する。
N, P, As, Sb, Bi, B, Si, Ge, Sn, Pb, O, S, Se, Te.

この規則は、環式骨格と鎖式骨格との比較に使われるが、環式骨格の間では適用しない。またア命名法を用いて命名する鎖式骨格にも適用しない。
ある環式骨格とある鎖式骨格とが同じ化合物クラスに属するなら環式骨格を選ぶ。
(c) 環式骨格の間での比較。
- (1) 窒素を含むヘテロ環を選ぶ。
- (2) ヘテロ環を選ぶ（炭素環と比べて）。
- (3) 環の数が多い骨格を選ぶ。
- (4) スピロ環、架橋縮合環、von Baeyer環、縮合環の系列で早いものを選ぶ。
- (5) 個々の環が大きい骨格を選ぶ（縮合炭素環に対して適用）。
- (6) 環骨格原子の総数が多い骨格を選ぶ。
- (7) ２以上の環に共有される環原子の数が多い骨格を選ぶ（von Baeyer環に対して適用）。
- (8) 架橋に対する位置番号が小さい骨格を選ぶ。
- (9) ヘテロ原子の数が多い骨格を選ぶ。
- (10) 窒素を除いて、ヘテロ原子の優先順位に従って最も優先性の高いヘテロ原子を含む骨格。すなわち次の順でヘテロ元素を優先する。
  O, S, Se, Te, P, As, Sb, Bi, Si, Ge, Sn, Pb, B.
- (11) 直列に並ぶ環の数が多い骨格。例えば Phenanthrene より Anthracene を選ぶ。
- (12) ヘテロ原子の位置番号が小さい骨格を選ぶ（縮合へテロ環および単環式ヘテロ環の命名法規則による位置番号について）。
- (13) 水素化度の低い骨格を選ぶ。例えば Cyclohexane より Benzene を、 Piperidine より Pyridine を選ぶ。
- (14) 指示水素の位置番号が小さい骨格を選ぶ。
(d) 非環式ヘテロ骨格（ア命名法の鎖を含む）において、ヘテロ原子の数が多い骨格を選ぶ。
(e) 見出しの母体が最大となる骨格を選ぶ（環集合命名法、接合命名法の場合を含む）。
鎖式化合物では骨格原子の数が最も多い骨格を選ぶ。例えば、Pentane（C₅）より Hexane（C₆）。
(f) 非環式ヘテロ骨格（ア命名法の鎖を含む）において、ヘテロ原子の優先順位に従って最も優先性の高いヘテロ原子の数が多い骨格。すなわち次の順でヘテロ元素を優先する。
O, S, Se, Te, N, P, As, Sb, Bi, Si, Ge, Sn, Pb, B.
例えば、Siを含む3個の骨格原子をもつ非環式骨格では、Disiloxane（Si₂+O）, Disilathiane（Si₂+S）, Trisilane（Si₃）の順。
(g) 多重結合の数（二重結合と三重結合を合わせた総数）が最多の骨格を選ぶ。二重結合と三重結合が同数なら二重結合を優先する。
(h) 見出しの母体について最小の位置番号を、ヘテロ原子、主基、多重結合、二重結合の順に。

化合物の中に同じ母体が複数の箇所に現れるなら、次の規則を順に適用して使う母体を決定する。

(i) 中心性。3個以上の母体では末端にあるものより内部にあるものを優先する。
内部の母体の間では次のようにして決める。最多数の母体が並ぶ列を探し、その中央にある母体を選ぶ。その列が偶数個の母体から成る場合は、中央の2個から選ぶ（多重命名法が用いうるなら、両方を母体に選ぶことになる）。
(j) 接頭辞で表される最多数の置換基を持つ母体を選ぶ。
(k) 置換基に対する位置番号が小さい母体を選ぶ。
(l) 母体の多重度。すなわち多重命名法を用いることができる場合、最多数の母体を表せるよう選ぶ。
(m) 索引の収録が最も早くなる名称を選ぶ。

参考文献

CAS. Chemical Abstracts, Index Guide, 1992. Appendix IV, ¶138.

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