2000-10-30
アセタールとヘミアセタール
1 アセタール(ケタールを含む)
アルデヒドから誘導されるアセタール[RCH(OR')2]およびケトンから誘導されるアセタール(すなわちケタール)[R2C(OR')2]は、IUPACでは以下の方法で命名する。CASでは (a)法を用いる。
※IUPAC 1979 ではケタールも acetal と命名していたが、IUPAC 1993で ketal の使用が再び認められた。ただし、IUPAC 1993でもケタールはアセタールの下位分類(subclass)とされる。
- CH3CH2CH(OEt)2
- 1,1-Diethoxypropane [IUPAC (a)/CAS]
1,1-ジエトキシプロパン
- Propanal diethyl acetal [IUPAC (b)]
プロパナール=ジエチル=アセタール
- Propionaldehyde diethyl acetal [IUPAC (b)]
プロピオンアルデヒド=ジエチル=アセタール
-
- 1-Ethoxy-1-methoxycyclohexane [IUPAC (a)/CAS]
1-エトキシ-1-メトキシシクロヘキサン
- Cyclohexanone ethyl methyl ketal [IUPAC (b)]
シクロヘキサノン=エチル=メチル=ケタール
2 ヘミアセタール(ヘミケタールを含む)
アルデヒドから誘導されるヘミアセタール[RCH(OH)(OR')]およびケトンから誘導されるヘミアセタール(すなわちヘミケタール)[R2C(OH')(OR')]は、IUPACでは以下の方法で命名する。CASでは (a)法を用いる。
※IUPAC 1979 ではヘミアセタールは (a) 法でのみ命名すべきものとされた。しかしよく使われるので、IUPAC 1993で種類名として復活した。
- CH3CH2CH2CH(OH)(OEt)
- 1-Ethoxybutan-1-ol [IUPAC (a)]
1-エトキシブタン-1-オール
- Butanal ethyl hemiacetal [IUPAC (b)]
ブタナール=エチル=ヘミアセタール
- Butyraldehyde ethyl hemiacetal [IUPAC (b)]
ブチルアルデヒド=エチル=ヘミアセタール
- 1-Ethoxy-1-butanol [CAS]
1-エトキシ-1-ブタノール
- CH3CH2C(OH)(OPh)CH3
- 2-Phenoxybutan-2-ol [IUPAC (a)]
2-フェノキシブタン-2-オール
- Butan-2-one phenyl hemiketal [IUPAC (b)]
ブタン-2-オン=フェニル=ヘミケタール
- 2-Phenoxy-2-butanol [CAS]
2-フェノキシ-2-ブタノール
3 アセタールのカルコゲン類縁体
アセタール(ケタールを含む)のカルコゲン類縁体は、IUPACでは以下の方法で命名する。CASでは (a)法を用いる。
- (a) 置換命名法により、RO-, RS- などを置換基として命名する。
- (b) acetal などに、カルコゲンへの置換を表す接頭辞 thio チオ、seleno セレノなどを添えて種類名を作り、アセタールと同様に命名する。2個のカルコゲンが異なるなら、基の結合するカルコゲン原子をイタリックの元素記号を位置番号として用いる。
- CH3CH(SEt)2
- 1,1-Bis(ethylsulfanyl)ethane [IUPAC (a)]
1,1-ビス(エチルスルファニル)エタン
- Acetaldehyde diethyl dithioacetal [IUPAC (b)]
アセトアルデヒド=ジエチル=ジチオアセタール
- 1,1-Bis(ethylthio)ethane [CAS]
1,1-ビス(エチルチオ)エタン
- Me2C(OEt)(SMe)
- 2-Ethoxy-2-(methylsulfanyl)propane [IUPAC (a)]
2-エトキシ-2-(メチルスルファニル)プロパン
- Acetone O-ethyl S-methyl monothioketal [IUPAC (b)]
アセトン=O-エチル=S-メチル=モノチオケタール
- 2-Ethoxy-2-(methylthio)propane [CAS]
2-エトキシ-2-(メチルチオ)プロパン
4 ヘミアセタールのカルコゲン類縁体
ヘミアセタール(ヘミケタールを含む)のカルコゲン類縁体は、IUPACでは以下の方法で命名する。CASでは (a)法を用いる。
- (a) 置換命名法により、RO-, RS- などが置換したアルコールまたはチオールなどとして命名する。
- (b) hemiacetal などに、カルコゲンへの置換を表す接頭辞 thio チオ、seleno セレノなどを添えて種類名を作り、ヘミアセタールと同様に命名する。2個のカルコゲンが異なるなら、基の結合するカルコゲン原子をイタリックの元素記号を位置番号として用いる。
- Me2C(OH)(SEt)
- 2-(Ethylsulfanyl)propan-2-ol [IUPAC (a)]
2-(エチルスルファニル)プロパン-2-オール
- Acetone S-ethyl monothiohemiketal [IUPAC (b)]
アセトン=S-エチル=モノチオヘミケタール
- 2-(Ethylthio)-2-propanol [CAS]
2-(エチルチオ)-2-プロパノール
- CH3CH(OEt)(SH)
- 1-Ethoxyethane-1-thiol [IUPAC (a)]
1-エトキシエタン-1-チオール
- Acetaldehyde O-ethyl monothiohemiacetal [IUPAC (b)]
アセトアルデヒド=O-エチル=モノチオヘミアセタール
- 1-Ethoxyethanethiol [CAS]
1-エトキシエタンチオール
- CH3CH2CH(SeH)(SEt)
- 2-(Ethylsulfanyl)propane-1-selenol [IUPAC (a)]
2-(エチルスルファニル)プロパン-1-セレノール
- Propanal S-ethyl selenothiohemiacetal [IUPAC (b)]
プロパナール=S-エチル=セレノチオヘミアセタール
- Propionaldehyde S-ethyl selenothiohemiacetal [IUPAC (b)]
プロピオンアルデヒド=S-エチル=セレノチオヘミアセタール
- 2-(Ethylthio)-1-propaneselenol [CAS]
2-(エチルチオ)-1-プロパンセレノール