昭和13年条約第5号

千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ、千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ及千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ「パリ」同盟条約(昭和13年7月27日)

朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ昭和九年六月二日「ロンドン」ニ於テ帝国全権委員ガ関係各国全権委員ト共ニ署名シタル千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ、千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ及千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ「パリ」同盟条約ヲ批准シ茲ニ之ヲ公布セシム

千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ、千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ及千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ「パリ」同盟条約

独逸国大統領、墺地利聯邦大統領、白耳義国皇帝陛下、「ブラジル」合衆国大統領、「キュバ」共和国大統領、丁抹国皇帝陛下、西班牙共和国大統領、「アメリカ」合衆国大統領、「フィンランド」共和国大統領、仏蘭西共和国大統領、「グレート、ブリテン」、「アイルランド」及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下、「ハンガリー」王国摂政殿下、伊太利国皇帝陛下、大日本帝国天皇陛下、「リヒテンシュタイン」国公殿下、「モロッコ」国皇帝陛下、「メキシコ」合衆国大統領、諾威国皇帝陛下、和蘭国皇帝陛下、「ポーランド」共和国大統領（「ポーランド」国及「ダンチッヒ」自由市ノ名ニ於テ）、「ポルトガル」共和国大統領、瑞典国皇帝陛下、瑞西聯邦政府、「チェッコスロヴァキア」共和国大統領、「テュニス」国公殿下、「トルコ」共和国大統領、「ユーゴースラヴィア」国皇帝陛下ハ

千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ及千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ノ為ノ国際同盟ノ創設ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ国際条約ニ或種ノ変更及追加ヲ為スコトヲ有用ナリト認メ左ノ如ク其ノ全権委員ヲ任命セリ

〔全権委員氏名省略〕

右全権委員ハ各自ノ全権委任状ヲ示シ之ガ良好妥当ナルコトヲ認メタル後左ノ諸規定ヲ協定セリ

　　　第一条

一　本条約ノ適用セラルル国ハ工業所有権保護ノ為同盟ヲ組織ス

二　工業所有権ノ保護ハ発明特許、実用新案、工業的意匠又ハ雛形、製造標又ハ商標、商号及原産地ノ表示又ハ出所ノ称呼並ニ不正競争ノ防止ヲ目的トス

三　工業所有権ハ最モ広キ意味ニ之ヲ解スベク本来ノ工業及商業ノミナラズ農産業及採取産業ノ範囲並ニ葡萄酒、穀物、煙草葉、果実、畜類、鉱物、鉱泉、麦酒、花卉、穀粉ノ如キ一切ノ製造品又ハ天然物ニモ及ブモノトス

四　発明特許中ニハ同盟国ノ法令ニ依リ認メラルル諸種ノ工業的特許即チ輸入特許、改良特許、追加ノ特許及証明書等ヲ包含ス

　　　第二条

一　各同盟国ノ国民ハ同盟ノ他ノ一切ノ国ニ於テ工業所有権ノ保護ニ関シ、本条約ニ依リ特ニ規定セラルル権利ヲ害セラルルコトナク、各其ノ法令ガ内国民ニ対シ現ニ許与シ又ハ将来許与スベキ利益ヲ享有スベシ従テ右国民ハ内国民ニ課セラルル条件及手続ヲ遵守スルニ於テハ内国民ト同一ノ保護ヲ受ケ且自己ノ権利ノ侵害ニ対シ内国民ト同一ノ法律上ノ救済ヲ与ヘラルベシ

二　尤モ工業所有権ノ享有ニ付、保護ノ要求セラルル国内ニ住所又ハ営業所ヲ有スベキ何等ノ条件ヲモ同盟国民ニ課スルコトヲ得ズ

三　司法手続、行政手続及管轄ニ付テノ並ニ工業所有権ニ関スル法令ニ依リ必要トセラルル住所ノ選定又ハ代理人ノ選任ニ付テノ各同盟国ノ法令ノ規定ハ明白ニ之ヲ留保ス

　　　第三条

同盟ニ属セザル国ノ国民ニシテ同盟ノ一国ノ領域内ニ住所ヲ有シ又ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所ヲ有スルモノハ之ヲ同盟国ノ国民ニ準ズ

　　　第四条

甲一　同盟ノ一国ニ於テ発明特許ノ出願或ハ実用新案、工業的意匠若ハ雛形又ハ製造標若ハ商標ノ登録出願ヲ合式ニ為シタル者又ハ其ノ承継人ハ他ノ同盟国ニ於テ出願ヲ為スニ付左ニ定ムル期間中優先権ヲ享有スベシ

二　各同盟国ノ国内法令又ハ多数ノ同盟国間ニ締結セラレタル国際条約ニ依リ合式ノ内国出願ノ価値ヲ有スル出願ハ優先権ヲ生ズルモノト認メラル

乙　従テ右期間満了前同盟ノ他ノ一国ニ於テ為サレタル後ノ出願ハ中間ニ於テ遂行セラレタル事実殊ニ他ノ出願、発明ノ公表若ハ実施、意匠若ハ雛形ノ複製品ノ発売又ハ標章ノ使用ニ依リ無効ト為ルコトナカルベク且此等ノ事実ハ何等ノ第三者ノ権利ヲモ又何等ノ使用権ヲモ発生セシムルコトヲ得ザルベシ優先権ノ基礎ヲ為セル最初ノ出願ノ日前ニ第三者ノ取得セル権利ハ各同盟国ノ国内法ノ効力ニ依リ留保セラル

丙一　前記ノ優先期間ハ発明特許及実用新案ニ付テハ十二月、工業的意匠又ハ雛形及製造標又ハ商標ニ付テハ六月トス

二　右期間ハ最初ノ出願ノ日ヨリ開始ス出願ノ日ハ期間ニ含マレザルモノトス

三　期間ノ最後ノ日ガ保護ノ要求セラルル国ニ於テ法定ノ休日ナルカ又ハ事務所ガ出願ヲ受理スル為開カレ居ラザル日ナル場合ニハ該期間ハ其ノ後ノ最初ノ平日迄延長セラルベシ

丁一　先ノ出願ノ優先ヲ主張セントスル者ハ該出願ノ日附及国名ヲ指示シタル宣言ヲ為スコトヲ要ス各国ハ右宣言ヲ為スベキ最終時期ヲ定ムベシ

二　右指示ハ権限アル官庁ヨリ発行スル刊行物殊ニ特許及之ニ付テノ明細書ニ関スルモノニ之ヲ掲載スベシ

三　同盟国ハ優先ノ宣言ヲ為ス者ニ対シ先ノ願書（明細書、図面等）ノ謄本ノ提出ヲ要求スルコトヲ得ベシ右願書ヲ受理シタル官庁ニ依リ認証セラレタル謄本ニハ何等公証ヲ要セズ且一切ノ場合ニ於テ該謄本ハ後ノ出願ノ日ヨリ三月ノ期間中何時タリトモ無料ニテ之ヲ提出スルコトヲ得ベシ該謄本ニハ右官庁ノ下付スル出願日附証明書及訳文ノ添附ヲ要求スルコトヲ得ベシ

四　出願ノ際ニ於ケル優先ノ宣言ニ付テハ他ノ手続ヲ要求スルコトヲ得ズ各同盟国ハ本条ニ定ムル手続ノ懈怠ノ効果ヲ定ムベシ但シ右効果ハ優先権ノ喪失ヲ以テ限度トス

五　其ノ後ニ於テハ他ノ証明書類ヲ要求スルコトヲ得ベシ

戊一　実用新案ノ登録出願ニ基ク優先権ニ依リ一国ニ於テ工業的意匠又ハ雛形ノ登録出願ヲ為シタル場合ニハ優先期間ハ工業的意匠又ハ雛形ニ付定メラレタル所ニ同ジ

二　尚特許出願ニ基ク優先権ニ依リ一国ニ於テ実用新案ノ登録出願ヲ為スコトヲ得実用新案ノ登録出願ニ基ク優先権ニ依リ特許出願ヲ為シ得ルコト亦同ジ

己　同盟ノ如何ナル国ト雖モ特許出願ガ二以上ノ優先ノ主張ヲ含ムコトヲ理由トシテ之ヲ拒絶スルコトヲ得ズ但シ該国ノ法令ノ意味ニ於テ発明ノ単一性アルコトヲ条件トス

庚　審査ノ結果特許出願ガ複合的ナルコト明白ト為ル場合ニハ出願者ハ右出願ヲ或数ノ分割出願ニ分割スルコトヲ得ベシ此ノ場合ニ於テハ初ノ出願ノ日附ヲ以テ分割セル各出願ノ日附ト為シ且優先権ノ利益アル場合ニハ之ヲ保有セシムルモノトス

辛　優先ハ本国ニ於ケル出願ニ於テ記載セラレタル請求範囲中ニ発明ノ或構成部分ニシテ優先ノ主張セラルルモノガ示サレ居ラザルコトヲ理由トシテ拒絶セラルルコトナシ但シ其ノ出願書類ノ全体ガ該構成部分ヲ明確ニ示シ居レルコトヲ条件トス

　　　第四条ノ二

一　同盟国民ガ各同盟国ニ於テ出願シタル特許ハ同盟国タルト否トヲ問ハズ他ノ国ニ於テ同一ノ発明ニ付得タル特許ト独立ノモノタルベシ

二　右規定ハ絶対的ノ意味殊ニ無効及失権ノ原因ニ関スルト普通ノ存続期間ニ関スルトヲ問ハズ優先期間中ニ出願シタル特許ガ独立ナリトノ意味ニ之ヲ解スベシ

三　第一項ノ規定ハ其ノ実施ノ際存在スル一切ノ特許ニ之ヲ適用ス

四　新ニ加入スル国アル場合ニ於テ其ノ加入ノ際加入国又ハ同盟国ニ存在スル特許ニ付亦同ジ

五　優先ノ利益ニ依リ得ラレタル特許ハ各同盟国ニ於テ該特許ガ優先ノ利益ナクシテ出願セラレ又ハ与ヘラレタリトセバ享有スベカリシ所ト同一ノ存続期間ヲ享有スベシ

　　　第四条ノ三

発明者ハ特許証ニ発明者トシテ掲記セラルルノ権利ヲ有ス

　　　第五条

甲一　特許権者ガ同盟ノ何レカノ国ニ於テ製造セラレタル物ヲ特許ヲ得タル国ニ輸入スルモ之ガ為ニ特許ノ失権ヲ来スコトナカルベシ

二　尤モ各同盟国ハ特許ニ依リ与ヘラレタル独占権ノ行使ヨリ生ズルコトアルベキ濫用例ヘバ不実施ヲ防止スルニ必要ナル立法的措置ヲ執ルコトヲ得ベシ

三　右措置ハ強制実施ノ許与ガ右ノ濫用ヲ防止スルニ充分ナラザル場合ニ於テノミ特許ノ失権ニ付規定スルコトヲ得ベシ

四　如何ナル場合ニ於テモ強制実施ノ許与ハ特許ヲ受ケタル日ヨリ起算シテ三年ノ経過前ニ於テハ之ヲ請求スルコトヲ得ザルベク且右強制実施ハ特許権者ガ正当ナル弁明ヲ為サザル場合ニ於テノミ之ヲ許与スルコトヲ得ベシ特許ノ失権又ハ取消ノ訴ハ最初ノ強制実施ノ許与ヨリ起算シテ二年ノ経過前ニ於テハ之ヲ提起スルコトヲ得ザルベシ

五　前記諸規定ハ必要ナル変更ヲ留保シ実用新案ニ適用セラルベシ

乙　工業的意匠又ハ雛形ノ保護ハ不実施ニ依リ又ハ保護セラルル物ト符合スル物ノ輸入ニ依リ之ヲ喪失セシムルコトヲ得ズ

丙一　一国ニ於テ登録商標ノ使用ガ義務的ナル場合ニハ相当ナル期間ノ経過後ニ於テ且商標権者ガ其ノ不作為ノ事由ノ正当ナルコトヲ弁明セザル場合ニ於テノミ該登録ヲ取消スコトヲ得ベシ

二　製造標又ハ商標ノ所有者ガ同盟ノ一国ニ於テ登録セラレタル態様ニ於ケル標章ノ特別顕著ノ性質ヲ変更セザル構成部分ニ於テ異ル態様ノ下ニ之ヲ使用スルコトハ登録ノ無効ヲ来スコトナカルベク且右標章ニ対シ与ヘラレタル保護ヲ減少セシムルコトナカルベシ

三　保護ノ請求セラルル国ノ国内法令ノ規定ニ依リ標章ノ共有者ト認メラルル工業的又ハ商業的営業所ガ同一又ハ類似ノ生産物ニ同一標章ヲ同時ニ使用スルコトハ同盟ノ何レノ国ニ於ケルヲ問ハズ登録ヲ妨ゲ又ハ右標章ニ対シ与ヘラルル保護ヲ毫モ減少セシムルコトナカルベシ但シ右使用ガ公衆ヲ誤謬ニ陥ラシムルノ結果ト為ラザルコト及公ノ利益ニ反セザルコトヲ条件トス

丁　特許、実用新案、製造標若ハ商標ノ登録又ハ工業的意匠若ハ雛形ノ登録ノ記号又ハ標記ハ権利ノ認識ノ為ニハ之ヲ生産物ニ附スベキコトヲ要求セラルルコトナカルベシ

　　　第五条ノ二

一　工業所有権保全ニ付規定セラレタル料金ノ支払ニ対シテハ少クトモ三月ノ恩恵期間ヲ与フベク其ノ場合ニ国内法令ガ割増料金ヲ賦課スルトキハ之ヲ支払フベキモノトス

二　発明特許ニ付テハ同盟国ハ又右恩恵期間ヲ少クトモ六月ト為スカ又ハ料金ノ不納ニ依リ失権シタル特許ノ回復ニ付規定スベキコトヲ約ス右何レノ措置モ国内法令ニ依リ規定セラレタル条件ニ従フモノトス

　　　第五条ノ三

左記ハ各同盟国ニ於テ特許権者ノ権利ヲ侵害スルモノト認メラルルコトナカルベシ

一　同盟ノ他ノ国ノ船舶ガ一時又ハ偶然ニ自国ノ領水ニ入リタル場合該船舶ニテノ船体及機械、船具、装置其ノ他ノ附属物ニ於ケル右特許権者ノ特許ノ目的タル発明ノ使用但シ右発明ハ該船舶ノ必要ニ対シテ専ラ使用セラルベキモノトス

二　同盟ノ他ノ国ノ空中又ハ地上移動機関ガ一時又ハ偶然ニ自国ニ入リタル場合該機関又ハ其ノ附属物ノ構造又ハ作用ニ於ケル右特許ノ目的タル発明ノ使用

　　　第六条

甲　本国ニ於テ合式ニ登録セラレタル一切ノ製造標又ハ商標ハ後ニ示サレタル留保ノ下ニ同盟ノ他ノ国ニ於テモ其ノ儘其ノ登録出願ヲ許容シ且之ヲ保護スベシ右ノ国ハ確定登録ヲ為ス前ニ本国ニ於ケル登録ノ証明書ニシテ権限アル官憲ヨリ下付セラレタルモノヲ提出セシムルコトヲ得ベシ右証明書ニハ何等ノ公証ヲモ要セザルベシ

乙一　尤モ左記ハ之ヲ拒絶シ又ハ無効ト為スコトヲ得ベシ

（一）　保護ノ要求セラルル国ニ於ケル第三者ノ既得権ヲ害スベキ性質ノ標章

（二）　特別顕著ノ性質ヲ有セザル標章或ハ生産物ノ種類、品質、分量、用途、価格、出所若ハ生産ノ時期ヲ示ス為商業上使用スルコトヲ得ル記号若ハ表示ヲ以テ又ハ保護ノ要求セラルル国ノ商業上ノ通用語若ハ該国ノ公正且不変ナル商慣習ニ於テ常用ト為リタル記号若ハ表示ヲ以テ専ラ組成シタル標章（標章ノ特別顕著ノ性質ヲ判別スルニ当リテハ一切ノ事情殊ニ標章ノ使用期間ヲ斟酌スベキモノトス）

（三）　道徳又ハ公ノ秩序ニ反スル標章殊ニ公衆ヲ欺瞞スルガ如キ標章（標章ガ標章ニ関スル法令ノ規定ニ適合セザルヲ唯一ノ理由トシテ之ヲ公ノ秩序ニ反スルモノト認ムルコトヲ得ザルベキモノトス但シ該規定自体ガ公ノ秩序ニ関スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ）

二　製造標又ハ商標ハ右標章ガ本国ニ於テ登録セラレタル態様ニ於ケル標章ノ特別顕著ノ性質ヲ変更セズ且其ノ同一性ニ触レザル構成部分ニ於テノミ本国ニ於テ保護セラルル標章ト異ルコトヲ唯一ノ理由トシテ同盟ノ他ノ国ニ於テ拒絶セラルルコトナカルベシ

丙　出願人ガ現実且真誠ナル工業的又ハ商業的営業所ヲ有スル同盟国並ニ出願人ガ斯ル営業所ヲ有セザルトキハ其ノ住所ヲ有スル同盟国及出願人ガ同盟国内ニ住所ヲ有セザルトキハ該出願人ニシテ同盟ノ一国ノ国民タルニ於テハ其ノ国籍所属国ハ本国ト認メラルベシ

丁　製造標又ハ商標ガ本国ニ於テ、次デ同盟ノ他ノ一又ハ多数ノ国ニ於テ合式ニ登録セラレタルトキハ右内国標章ノ各ハ其ノ登録セラレタル日ヨリ本国ニ於ケル標章ト独立ノモノト認メラルベシ但シ右標章ガ輸入国ノ国内法令ニ適合スルコトヲ条件トス

戊　如何ナル場合ニ於テモ本国ニ於ケル標章ノ登録ノ更新ハ該標章ノ登録セラレタル同盟ノ他ノ国ニ於テ登録ヲ更新スルノ義務ヲ生ゼシムルコトナカルベシ

己　第四条ノ期間内ニ為サレタル標章ノ登録出願ハ本国ニ於ケル登録ガ右期間経過後ニ於テ為サルル場合ト雖モ優先ノ利益ヲ失ハザルモノトス

　　　第六条ノ二

一　同盟国ハ製造標又ハ商標ニシテ登録国ノ権限アル官憲ガ本条約ノ利益ヲ享有スベキ者ノ標章トシテ且同一又ハ類似ノ生産品ニ使用セラルルモノトシテ該登録国ニ於テ広ク知ラレタリト認ムル標章ノ複製又ハ該標章トノ混同ヲ生ゼシメ易キ模倣若ハ翻訳ヲ構成スルモノノ登録ヲ職権ヲ以テ（該国ノ法令ガ之ヲ許ス場合ニハ）又ハ利害関係者ノ請求ニ依リ拒絶シ又ハ無効ト為スベキコトヲ約ス標章ノ要部ガ広ク知ラレタル標章ノ複製又ハ該標章ト混同ヲ生ゼシメ易キ模倣ヲ構成スル場合亦同ジ

二　右標章ノ取消ヲ請求スル為少クトモ三年ノ期間ヲ与フベシ右期間ハ標章登録ノ日ヨリ開始スベシ

三　悪意ヲ以テ登録セラレタル標章ノ取消ヲ請求スル為ノ期間ハ定メラルルコトナカルベシ

　　　第六条ノ三

一　同盟国ハ同盟国ノ国ノ紋章、旗章其ノ他ノ徽章、同盟国ニ依リ採用セラルル監督用及証明用ノ官ノ記号及印章並ニ紋章学上ノ見地ニ於ケル此等ノ模倣ノ製造標若ハ商標トシテノ又ハ其ノ要部トシテノ登録ヲ拒絶シ又ハ無効トシ且権限アル官憲ノ許可ナキ使用ヲ適当ナル方法ニ依リ禁止スルコトヲ約ス

二　監督用及証明用ノ官ノ記号及印章ニ関スル右ノ禁止ハ此等ヲ含ム標章ガ同一又ハ類似ノ商品ニ使用セラルベキ場合ニ限リ適用セラルベシ

三　右諸規定ノ適用ニ付テハ同盟国ハ「ベルヌ」ノ国際事務局ノ仲介ニ依リ該同盟国ガ絶対的ニ又ハ或制限内ニ於テ本条ノ保護ノ下ニ置クコトヲ希望シ又ハ希望スルコトアルベキ国ノ徽章、監督用及証明用ノ官ノ記号及印章ノ表並ニ該表ニ加ヘタル一切ノ爾後ノ変更ヲ相互ニ通知スルコトヲ約ス各同盟国ハ通知ヲ受ケタル該表ヲ適当ナル時期ニ於テ公衆ノ利用ニ資スベシ

四　同盟国ハ右通知ノ受領ノ時ヨリ十二月ノ期間内ニ該同盟国ノ有スルコトアルベキ異議ヲ「ベルヌ」ノ国際事務局ノ仲介ニ依リ利害関係国ニ送付スルコトヲ得ベシ

五　国ノ徽章ニシテ広ク知ラレタルモノニ付テハ第一項ニ定ムル措置ハ千九百二十五年十一月六日後登録セラレタル標章ニノミ適用セラルベシ

六　国ノ徽章ニシテ広ク知ラレザルモノ並ニ官ノ記号及印章ニ付テハ右諸規定ハ第三項ニ定ムル通知ノ受領後二月ヲ超エテ登録セラレタル標章ニノミ適用セラルベシ

七　悪意ノ場合ニ於テハ同盟国ハ国ノ徽章、記号及印章ヲ含ム標章ニシテ千九百二十五年十一月六日前登録セラレタルモノヲモ取消スノ権能ヲ有スベシ

八　各国ノ国民ニシテ自国ノ国ノ徽章、記号及印章ノ使用ヲ許可セラルルモノハ右国ノ徽章、記号及印章ガ他国ノ其レト類似スル場合ト雖モ之ヲ使用スルコトヲ得ベシ

九　同盟国ハ同盟ノ他ノ国ノ国ノ紋章ノ許可ナキ商業上ノ使用ガ生産物ノ出所ニ付誤謬ヲ生ゼシムルガ如キ場合ニハ該使用ヲ禁止スルコトヲ約ス

十　前諸規定ハ第六条乙第一項第三号ノ適用ニ依リ国ノ紋章、旗章、勲章其ノ他ノ徽章又ハ同盟ノ一国ノ採用セル官ノ記号及印章ヲ許可ナクシテ包含セシメタル標章ヲ拒絶シ又ハ無効ト為ス権能ノ各国ニ依ル行使ヲ妨グルコトナシ

　　　第六条ノ四

一　同盟ノ一国ノ法令ニ依レバ標章ノ譲渡ガ該標章ノ属スル企業又ハ営業ノ移転ト同時ニ為サルル場合ニ於テノミ効力アルトキハ右効力ノ認メラルル為ニハ企業又ハ営業ノ該国ニ在ル部分ガ譲渡セラレタル標章ヲ附シタル生産物ヲ該国ニ於テ製造シ又ハ販売スルノ独占権ト共ニ譲受人ニ移転セラルルヲ以テ足ル

二　右規定ハ標章ニシテ其ノ譲受人ニ依ル使用ガ事実上公衆ヲ（殊ニ右標章ヲ附シタル生産物ノ原産地、性質又ハ品位ニ関シテ）誤謬ニ陥ラシムルガ如キモノノ譲渡ヲ有効ト認ムル義務ヲ同盟国ニ課スルモノニ非ズ

　　　第七条

製造標又ハ商標ノ附セラルベキ生産物ノ性質ハ如何ナル場合ニ於テモ標章登録ノ妨害ト為ルコトナシ

　　　第七条ノ二

一　同盟国ハ団体ニシテ其ノ存在ガ本国ノ法令ニ違反セザルモノニ属スル団体標章ノ登録出願ヲ許容シ且保護ヲ為スベキコトヲ約ス右団体ガ工業的又ハ商業的営業所ヲ有セザル場合ト雖モ亦同ジ

二　各国ハ団体標章ガ保護セラルルニ付テノ特別条件ヲ定ムベク且右標章ガ公ノ利益ニ反スル場合ニハ保護ヲ拒絶スルコトヲ得ベシ

三　尤モ右標章ノ保護ハ団体ニシテ其ノ存在ガ本国ノ法令ニ違反セザルモノニ対シテハ右団体ガ保護ノ請求セラルル国ニ於テ設立セラレ居ラザルコト又ハ該国ノ法令ニ従ヒテ構成セラレ居ラザルコトノ理由ニ依リ拒絶セラルルコトナシ

　　　第八条

商号ハ製造標又ハ商標ノ一部ヲ成スト否トニ拘ラズ出願又ハ登記ヲ要スルコトナクシテ同盟ノ一切ノ国ニ於テ保護セラルベシ

　　　第九条

一　製造標若ハ商標又ハ商号ヲ不正ニ附シタル生産物ハ右標章又ハ商号ガ法律上ノ保護ヲ受クルノ権利ヲ有スル同盟国ニ輸入ノ際差押ヘラルベシ

二　差押ハ又右不正附著ノ行ハレタル国内又ハ右生産物ノ輸入セラレタル国内ニ於テ行ハルベシ

三　差押ハ検事、他ノ権限アル官憲又ハ自然人若ハ法人タル利害関係者ノ請求ニ依リ各国ノ国内法令ニ従ヒ行ハルベシ

四　官憲ハ通過ノ場合ニハ差押ヲ行フコトヲ要セズ

五　国ノ法令ガ輸入差押ヲ認メザル場合ニハ輸入禁止又ハ国内差押ヲ以テ右差押ニ代フベシ

六　国ノ法令ガ輸入差押、輸入禁止及国内差押ヲ認メザル場合ニ於テハ之ガ為該法令ノ変更セラルルニ至ル迄ハ該国ノ法令ガ同様ノ場合ニ内国民ニ認ムル訴権及手続ヲ以テ右措置ニ代フベシ

　　　第十条

一　前条ノ規定ハ原産地ノ表示トシテ虚偽ニ一定ノ地名又ハ国名ヲ附シタル一切ノ生産物ニ対シ該表示ガ詐欺ノ意思ヲ以テ仮設又ハ僭用ノ商号ニ附加セラレタル場合ニ於テ之ヲ適用スベシ

二　右生産物ノ生産、製造又ハ商業ニ従事スル生産者、製造者又ハ商人ニシテ原産地トシテ詐称セラレタル土地、該地ノ所在スル地方又ハ詐称セラレタル国又ハ原産地ノ詐称ノ使用セラレタル国ニ居住スルモノハ其ノ自然人タルト法人タルトヲ問ハズ一切ノ場合ニ於テ之ヲ利害関係者ト認ムベシ

　　　第十条ノ二

一　同盟国ハ不正競争ニ対シ同盟国民ニ有効ナル保護ヲ与フルコトヲ要ス

二　工業上又ハ商業上ノ誠実ナル慣習ニ反スル一切ノ競争行為ハ不正競争ノ行為ヲ構成ス

三　特ニ左記ハ之ヲ禁止スベシ

（一）　如何ナル方法ニ依ルヲ問ハズ競争者ノ営業施設、生産物又ハ工業上若ハ商業上ノ活動ト混同ヲ生ゼシムルガ如キ一切ノ行為

（二）　競争者ノ営業施設、生産物又ハ工業上若ハ商業上ノ活動ノ信用ヲ害スルガ如キ商業上ニ於ケル虚偽ノ主張

　　　第十条ノ三

一　同盟国ハ第九条、第十条及第十条ノ二ニ掲ゲラルル一切ノ行為ヲ有効ニ防止スル為同盟ノ他ノ国ノ国民ニ対シ適当ナル法律上ノ救済ヲ確保スルコトヲ約ス

二　同盟国ハ又利害関係アル工業者、生産者又ハ商人ヲ代表スル組合及団体ニシテ其ノ存在ガ其ノ本国ノ法令ニ違反セザルモノヲシテ保護ノ要求セラルル国ノ法令ガ自国ノ組合及団体ニ許容スル程度ニ於テ第九条、第十条及第十条ノ二ニ掲ゲラルル行為ヲ防止スル為訴訟ヲ提起シ又ハ行政官憲ニ請求スルコトヲ得シムベキ措置ヲ規定スルコトヲ約ス

　　　第十一条

一　同盟国ハ其ノ一国ノ領域内ニ開設セラルル官設又ハ官許ノ国際博覧会ニ出品セラルル生産物ニ関シ其ノ国内法令ニ従ヒ、特許ヲ受ケ得ベキ発明、実用新案、工業的意匠又ハ雛形及製造標又ハ商標ニ仮保護ヲ与フベシ

二　右仮保護ハ第四条ノ期間ヲ延長スルコトナカルベシ後ニ優先権ガ主張セラルルトキハ各国ノ官庁ハ右期間ヲ生産物ノ博覧会搬入ノ日ヨリ開始セシムルコトヲ得ベシ

三　各国ハ陳列品ノ同一性及搬入日ノ証拠トシテ其ノ必要ト認ムル証明書類ヲ要求スルコトヲ得ベシ

　　　第十二条

一　各同盟国ハ工業所有権ニ関スル特別ノ部局並ニ発明特許、実用新案、工業的意匠又ハ雛形及製造標又ハ商標ヲ公衆ニ知ラシムル為ノ中央陳列所ヲ設置スルコトヲ約ス

二　右部局ハ定期刊行ノ公報ヲ発行スベシ右部局ガ規則的ニ公示スベキモノ左ノ如シ

（イ）　与ヘラレタル特許ノ権利者ノ名及特許発明ノ簡明ナル表示

（ロ）　登録セラレタル標章ノ複製

　　　第十三条

一　工業所有権保護国際事務局ナル名称ヲ以テ「ベルヌ」ニ設立セラレタル国際事務局ハ瑞西聯邦政府ノ下ニ置カレ該政府ハ其ノ組織ヲ定メ且其ノ事務ヲ監督ス

二　国際事務局ノ公用語ハ仏蘭西語トス

三　国際事務局ハ工業所有権ノ保護ニ関スル一切ノ情報ヲ蒐集シテ之ヲ集録シ且公表ス該局ハ同盟ニ関スル共同利益事項ノ研究ヲ為シ又諸国ノ官庁ニ依リ提供セラレタル書類ヲ参照シテ同盟ノ目的ニ関スル問題ニ付テノ仏蘭西語ノ定期刊行物ヲ編纂ス

四　右刊行物ノ部数ハ国際事務局ノ発行スル一切ノ書類ト同様左ニ記載スル経費分担ノ単位数ニ比例シテ同盟国ノ官庁ニ分配セラルベシ右官庁又ハ団体若ハ個人ニ依リ請求セラルル右部数以外ノ定期刊行物及書類ニ対シテハ別ニ代価ヲ支払フベシ

五　国際事務局ハ工業所有権ニ付テノ国際事務ニ関スル問題ニ付同盟国ノ必要トスルコトアルベキ特殊ノ情報ヲ之ニ供給スル為何時ニテモ該同盟国ノ請求ニ応ズルコトヲ要ス国際事務局長ハ其ノ所管事務ニ付年報ヲ作成シ之ヲ同盟ノ一切ノ国ニ送付ス

六　国際事務局ノ経常経費ハ同盟国ニ依リ共同シテ負担セラルベシ該経費ハ新ナル定アル迄ハ毎年十二万瑞西「フラン」ノ額ヲ超過スルコトヲ得ザルベシ右ノ額ハ必要アル場合ニハ第十四条ニ掲ゲラルル会議ノ一ノ全会一致ノ決議ニ依リ之ヲ増加スルコトヲ得ベシ

七　経常経費ハ全権会議又ハ主管庁会議ノ事業ニ関スル費用及会議ノ決定ニ依リ為サルル特別事業又ハ出版ガ必要トスルコトアルベキ費用ヲ包含セズ右ノ費用ハ年額二万瑞西「フラン」ヲ超過スルコトヲ得ザルモノトシ第八項ノ規定ニ従ヒ国際事務局ノ事務ノ為ニ同盟国ノ支払フ分担金ニ比例シテ同盟国間ニ分賦セラルベシ

八　右経費総額ニ対スル各国ノ分担額ヲ定ムル為同盟国及将来同盟ニ加入スベキ国ヲ六等ニ区分シ各等ハ左ノ一定単位数ノ比例ヲ以テ分担ス

第一等　　　　二十五単位

第二等　　　　二十単位

第三等　　　　十五単位

第四等　　　　十単位

第五等　　　　五単位

第六等　　　　三単位

右系数ニ各等ノ国数ヲ乗ジ之ニ依リ得タル積ノ和ヲ単位数トシ之ヲ以テ経費総額ヲ除スベシ其ノ商ヲ一単位ノ経費額トス

九　各同盟国ハ加入ノ際自国ノ加ハラント欲スル等級ヲ指定スベシ但シ各同盟国ハ他ノ等級ニ列セラレンコトヲ希望スル旨ヲ爾後宣言スルコトヲ得ベシ

十　瑞西聯邦政府ハ国際事務局ノ支出ヲ監督シ必要ナル立替ヲ為シ且毎年度ノ出納計算書ヲ作成シテ之ヲ他ノ一切ノ官庁ニ送付スベシ

　　　第十四条

一　本条約ハ同盟ノ制度ヲ完全ナラシムベキ改良ヲ加ヘンガ為時時之ニ改正ヲ施スベシ

二　右目的ノ為順次同盟ノ一国ニ於テ同盟国代表間ニ会議ヲ行フベシ

三　会議ガ開カルベキ国ノ官庁ハ国際事務局ノ協力ニ依リ該会議ノ準備ヲ為スベシ

四　国際事務局長ハ会議ノ議事ニ列席シ討論ニ参加スト雖モ議決ニ加ハラズ

　　　第十五条

同盟国ハ本条約ノ規定ニ牴触セザル限リ其ノ相互間ニ個別的ニ工業所有権ノ保護ニ関スル特別取極ヲ為スノ権利ヲ夫々留保スルモノトス

　　　第十六条

一　本条約ニ参加セザル国ハ其ノ請求ニ依リ之ニ加入スルコトヲ得ベシ

二　右加入ハ外交上ノ手続ニ依リ瑞西聯邦政府ニ之ヲ通告スベク該政府ハ之ヲ他ノ一切ノ政府ニ通告スベシ

三　右加入ハ当然本条約ニ規定スル一切ノ条款ヘノ加入ト一切ノ利益ノ享受トヲ伴フベク且瑞西聯邦政府ガ他ノ同盟国ニ対シテ為シタル通告ノ発送後一月ニシテ其ノ効力ヲ生ズベシ但シ右加入請求ニ於テ其ノ後ノ日ガ指定セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

　　　第十六条ノ二

一　各同盟国ハ本条約ガ其ノ殖民地、保護領、委任統治地域若ハ其ノ権力ノ下ニ在ル他ノ一切ノ地域又ハ宗主権ノ下ニ在ル一切ノ地域ノ全部又ハ一部ニ適用セラルル旨ヲ瑞西聯邦政府ニ何時ニテモ書面ヲ以テ通告スルコトヲ得ベク又本条約ハ瑞西聯邦政府ニ依リ同盟ノ他ノ国ニ対シ為サレタル通知ノ発送後一月ニシテ右通告中ニ掲ゲラレタル一切ノ地域ニ適用セラルベシ但シ右通告ニ於テ其ノ後ノ日ガ指定セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ右通告ナキトキハ本条約ハ右地域ニ適用セラレザルベシ

二　各同盟国ハ本条約ガ前項ニ定ムル通告ノ目的ト為リタル地域ノ全部又ハ一部ニ対シ適用セラレザルニ至ル旨ヲ瑞西聯邦政府ニ何時ニテモ書面ヲ以テ通告スルコトヲ得ベク本条約ハ瑞西聯邦政府ニ宛テラレタル通告ノ受領後十二月ニシテ右通告中ニ掲ゲラレタル地域ニ於テ適用セラレザルニ至ルベシ

三　本条第一項及第二項ノ規定ニ従ヒ瑞西聯邦政府ニ対シテ為サレタル一切ノ通告ハ之ヲ該政府ヨリ一切ノ同盟国ニ通知スベシ

　　　第十七条

本条約ニ掲グル相互的約束ノ履行ハ必要アルトキハ同盟国ガ適用スルコトヲ要スル該同盟国憲法所定ノ手続及規則ノ実行ヲ前提トス右ハ同盟国ニ於テ成ルベク速ニ之ヲ為スコトヲ要ス

　　　第十七条ノ二

一　本条約ハ之ヲ廃棄シタル日ヨリ一年ノ期間ノ満了ニ至ル迄無期限ニ其ノ効力ヲ有スベシ

二　右廃棄ハ瑞西聯邦政府ニ宛テ之ヲ為スベシ該廃棄ハ自国ノ名ニ於テ之ガ為サレタル国ニ対シテノミ其ノ効力ヲ生ズベク同盟ノ他ノ国ニ付テハ本条約ハ其ノ効力ヲ存続スルモノトス

　　　第十八条

一　本条約ハ批准セラルベク其ノ批准書ハ遅クトモ千九百三十八年七月一日迄ニ「ロンドン」ニ於テ寄託セラルベシ本条約ハ自国ノ名ニ於テ批准ガ為サレタル国ノ間ニ於テハ右期日後一月ニシテ実施セラルベシ但シ其ノ前ニ於テ本条約ガ少クトモ六国ノ名ニ於テ批准セラレタル場合ニハ本条約ハ此等ノ国ノ間ニ於テハ第六ノ批准書ノ寄託ガ瑞西聯邦政府ニ依リ此等ノ国ニ通告セラレタル後一月ニシテ又其ノ後自国ノ名ニ於テ批准ガ為サルル国ニ付テハ各其ノ批准ガ通告セラレタル後一月ニシテ実施セラルベシ

二　前項ニ定ムル期間内ニ自国ノ名ニ於テ批准書ガ寄託セラレザル国ハ第十六条ノ規定ニ依リ加入スルコトヲ得ベシ

三　本条約ハ其ノ適用セラルル国ノ間ノ関係ニ於テハ千八百八十三年ノ「パリ」同盟条約及爾後ノ改正諸条約ニ代ルベシ

四　本条約ノ適用ナキモ千九百二十五年「ヘーグ」ニ於テ改正セラレタル「パリ」同盟条約ノ適用セラルル国ニ関シテハ右同盟条約ガ引続キ効力ヲ有スベシ

五　同様ニ本条約及「ヘーグ」ニ於テ改正セラレタル「パリ」同盟条約ノ何レモ適用セラレザル国ニ関シテハ千九百十一年「ワシントン」ニ於テ改正セラレタル「パリ」同盟条約ガ引続キ効力ヲ有スベシ

　　　第十九条

本条約ハ一通ノ本書ニ署名シ該本書ハ之ヲ「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」聯合王国政府ノ記録ニ寄託スベシ「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」聯合王国政府ハ認証謄本一通ヲ各同盟国政府ニ交付スベシ

千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ本書一通ヲ作成ス

〔全権委員署名省略〕

天佑ヲ保有シ万世一系ノ帝祚ヲ践メル大日本帝国皇帝（御名）此ノ書ヲ見ル有衆ニ宣示ス

朕昭和九年六月二日「ロンドン」ニ於テ帝国全権委員ガ関係各国全権委員ト共ニ署名シタル千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ、千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ及千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ「パリ」同盟条約ヲ閲覧点検シ之ヲ嘉納批准ス

神武天皇即位紀元二千五百九十八年昭和十三年五月九日東京宮城ニ於テ親ラ名ヲ署シ璽ヲ鈐セシム

〔参照〕

（昭和13年7月27日外務省告示第63号）

帝国政府ハ昭和九年六月二日「ロンドン」ニ於テ帝国全権委員ガ関係各国全権委員ト共ニ署名シタル千九百年十二月十四日「ブラッセル」ニ於テ、千九百十一年六月二日「ワシントン」ニ於テ、千九百二十五年十一月六日「ヘーグ」ニ於テ及千九百三十四年六月二日「ロンドン」ニ於テ改正セラレタル工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ「パリ」同盟条約ニ対スル帝国ノ批准書ヲ昭和十三年六月十七日英国政府ニ寄託セリ

右批准書ノ寄託並ニ右条約ノ朝鮮、台湾及樺太ニ対スル適用ハ瑞西聯邦政府ニ依リ昭和十三年六月二十九日附ヲ以テ締約国政府ニ通告セラレタリ

仍テ右条約ハ同条約第十八条ニ依リ昭和十三年八月一日ヨリ実施セラルベシ