明治35年8月18日条約

万国工業所有権保護ニ関スル千八百八十三年三月二十日ノ条約及附属議定書ヲ修正スル追加条約(明治35年8月18日)

一　該条約第三条ハ左ノ如クナルヘシ

第三条　同盟ニ加入セサル国ノ臣民或ハ人民ニシテ同盟中ノ一国ノ版図内ニ住所ヲ有シ或ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所ヲ有スル者ハ締盟国ノ臣民或ハ人民ニ準スヘキモノトス

二　第四条ハ左ノ如クナルヘシ

第四条　締盟国中ノ一国ニ於テ合式ニ発明ノ特許出願、工業的意匠或ハ雛形若ハ製造標或ハ商標ノ登録出願ヲ為シタル者ハ他ノ締盟国ニ於テ出願ヲ為スニ方リ第三者ノ権利ヲ保留シテ下ニ定ムル期間ハ優先権ヲ有スヘシ

2 故ニ右期間満了前ニ他ノ締盟国ニ於テ為シタル出願ハ其ノ中間ニ於テ遂行セラレタル事実殊ニ他ノ出願アリタルコト、其ノ発明ヲ公ニシ或ハ実施シタルコト、意匠或ハ雛形ノ模本ヲ発売シタルコト、若ハ標章（製造標或ハ商標）ヲ使用シタルコトニ因リ無効トナルコトナシ

3 上ニ記載セル優先権ノ期間ハ発明ノ特許ニ在リテハ十二箇月、工業的意匠或ハ雛形若ハ製造標或ハ商標ニ在リテハ四箇月トス

三　該条約ニ左ノ第四条ノ二ヲ挿入ス

第四条ノ二　第二条及第三条ノ規定ニ拠リ本条約ノ利益ヲ享受スル者カ各締盟国ニ出願シテ得タル特許ト同一ノ発明ニ対シ他ノ締盟国或ハ締盟国外ノ国ニ於テ得タル特許トハ互ニ独立ノモノタルヘシ

2 前項ノ規定ハ其ノ実施ノ時ニ方リ存在スル特許ニ適用セラルヘシ

3 新ニ加入スル国アル場合ニ於テハ其ノ加入ノ時ニ方リ加入国又ハ締盟国ニ存在スル特許ニ付テモ亦同シ

四　第九条ニ左ノ二項ヲ追加ス

3 法令ニ依リ輸入ノ際差押ヲ許ササル国ニ於テハ輸入禁止ヲ以テ輸入差押ニ代フルコトヲ得ヘシ

4 通過ノ場合ニ於テハ当該官庁ハ差押ヲ為スノ義務ナキモノトス

五　第十条ハ左ノ如クナルヘシ

第十条　前条ノ規定ハ製産地ノ表示トシテ虚偽ニ一定ノ地名ヲ附セシ総テノ製産物ニ適用スヘシ但此ノ表示ニ虚構ノ商号ヲ附加シ若ハ詐欺ノ意思ヲ以テ僭用シタル商号ヲ附加シタルトキニ限ル

2 右製産物ノ生産、製造或ハ商業ニ従事スル生産者、製造者或ハ商人ニシテ産地トシテ詐称セラレタル土地若ハ該地所在ノ地方ニ住居スル者ハ総テ之ヲ利害関係人ト看做ス

六　該条約ニ左ノ第十条ノ二ヲ挿入ス

第十条ノ二　本条約ノ利益ヲ享受スル者（第二条、第三条）ハ同盟各国ニ於テ不正ノ競争ニ関シ其ノ内国人ニ附与スルト同様ノ保護ヲ享受スヘシ

七　第十一条ハ左ノ如クナルヘシ

第十一条　締盟国ハ互ニ締盟国中ノ一国ノ版図内ニ開設セル官設或ハ官許ノ万国博覧会ニ出品スル製産物ニ対シ各其ノ国ノ法令ニ遵ヒ特許的発明、工業的意匠或ハ雛形並製造標或ハ商標ニ仮保護ヲ与フヘシ

八　第十四条ハ左ノ如クナルヘシ

第十四条　本条約ハ同盟制度ヲ完全ナラシムヘキ改良ヲ加ヘムカ為メ時時改正ヲ施スヘシ

2 右ノ目的ヲ達スル為メ前記締盟国ノ委員ハ逐次締盟国ノ一ニ会シテ会議ヲ開クヘシ

九　第十六条ハ左ノ如クナルヘシ

第十六条　本条約ニ加入セサル国ト雖モ其ノ請求ニ依リ加入スルコトヲ許スヘシ

2 右ノ加入ハ外交上ノ手続ニ由リ瑞西聯邦政府ニ申込ムヘシ而シテ該政府ヨリ之ヲ他ノ締盟国ニ報告スヘシ

3 新ニ加入スル国ハ当然本条約ノ全部ニ賛同シタルモノトシ本条約ニ規定スル一切ノ利益ヲ享受スヘシ而シテ該加入ハ瑞西政府カ他ノ締盟国ニ対シテ為シタル通知ノ発送ヨリ一箇月ヲ経タル後ニ其ノ効果ヲ生スヘシ但加入国ニ於テ其ノ以後ノ日付ヲ指定シタルトキハ此ノ限ニアラス