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商標条例
明治17年6月7日太政官布告第19号(明治17年10月1日施行版)
第一条 商標ハ農商務省ノ商標簿ニ登録ヲ経タルトキハ其所有主ニ於テ登録ノ日ヨリ十五年間之ヲ専用スルノ権ヲ有ス可シ
第二条 商標ヲ専用セント欲スル者ハ願書ニ見本并明細書ヲ添ヘ登録ヲ願出ツ可シ其明細書ニハ商標ノ説明、用方并其商品ノ名目種類ヲ詳記ス可シ
2 其登録ヲ経タル者ハ登録証ヲ下付ス可シ
第三条 商標ノ登録ヲ願出ツル者アルトキハ願書ノ日附ヨリ二ケ月間之ヲ留置其間ニ之ト牴触ス可キ願書到達セサレハ之ヲ登録ス可シ
2 若シ二人以上同一又ハ相紛ラハシキ商標ヲ同一種類ノ商品ニ専用センカ為メ登録ヲ願出ツル者アリ牴触スルトキハ其願書日附ノ後ナル者ヲ却下ス其日附同シキ者ハ共ニ之ヲ却下ス可シ
第四条 登録商標ハ農商務卿ニ於テ衆庶ノ観覧ニ供スル為メ便宜ノ方法ヲ定ム可シ
第五条 左ノ商標ハ登録ヲ願出ツルコトヲ得ス
- 一 已ニ登録セル商標ト同一又ハ相紛ラハシキ商標ニシテ同一種類ノ商品ニ用フル者
- 二 地名人名家号会社名ノミヲ以テスル者又ハ商品普通ノ名称或ハ内外国ノ旗章ノミヲ以テスル者
- 三 同業者普通ニ用ヒ又ハ商業上慣用セル目印ヲ以テスル者
- 四 新ニ使用スル商標ニシテ本条例頒布以前ヨリ現ニ使用者アル商標ト同一又ハ相紛ラハシキ商標ヲ同一種類ノ商品ニ用フル者
第六条 登録商標主其専用年限中転籍転居又ハ氏名ヲ変換シタルトキ及廃業シ又ハ休業一ケ年ニ及ヒタルトキハ三ケ月以内ニ之ヲ届出ツ可シ
第七条 登録商標専用年限中其相続者ニ於テ其業ヲ相続シタルトキハ三ケ月以内ニ之ヲ届出ツ可シ
第八条 登録商標主其商標ノ専用権ヲ他人ニ譲与又ハ分与セントスルトキハ更ニ其登録ヲ願出ツ可シ但専用年限ハ最初登録ノ日ヨリ通算ス可シ
第九条 登録商標ヲ他ノ種類ノ商品ニ兼用若クハ転用シ又ハ之ヲ改正セントスルトキハ更ニ其登録ヲ願出ツ可シ
2 前項ノ場合ニ於テハ第三条ニ依テ処分ス可シ
第十条 登録商標専用満期ノ後之ヲ続用セントスル者ハ満期三ケ月前ニ更ニ其登録ヲ願出ツ可シ
第十一条 登録証ヲ毀損遺失シタルトキハ其再渡ヲ願出ツ可シ
第十二条 商標ヲ登録セシ後第五条ニ触レ又ハ登録願書及見本明細書ニ相違ノ事実アルコトヲ発見シタルトキハ其登録無効ニ帰シ登録証ヲ返納セシム可シ
第十三条 登録商標主其業ヲ廃シタルトキハ廃業ノ日ヨリ其専用権ヲ失ス休業三ケ年ニ及フ者亦同シ
第十四条 商標ノ登録ヲ願出ツル者ハ左ノ手数料ヲ納ム可シ但願書ヲ却下スルトキハ之ヲ返付ス
- 一 商標一個ニ付金拾円但一商標ヲ数種ノ商品ニ兼用若クハ転用スル者ハ其商品一種コトニ金五円ヲ加フ
- 二 商標ノ譲与分与又ハ改正ヲ願出ツル者及満期続用ヲ願出ツル者ハ商標一個ニ付金五円
- 三 登録証ノ再渡ヲ願出ツル者ハ商標一個ニ付金壱円
第十五条 登録商標主其専用権ヲ侵サレタルトキハ之ヲ告訴シ並要償ノ訴ヲ為スコトヲ得
第十六条 登録商標ヲ偽造シテ使用シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四拾円以下ノ罰金ヲ附加ス其盗用シタル者ハ一等ヲ減ス
第十七条 登録商標ニ相紛ラハシキ商標ヲ造リテ使用シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第十八条 第十六条第十七条ノ違犯ニ係ル商標ヲ附シタル商品ヲ情ヲ知テ販売シタル者ハ四円以上四拾円以下ノ罰金ニ処ス
第十九条 第十六条第十七条第十八条ノ場合ニ於テハ仍ホ違犯ノ商標ヲ没収ス其商品ト分離スヘカラサルモノハ商品ヲ破毀セシム
第二十条 詐偽ノ所為ヲ以テ商標ノ登録ヲ得及商標ノ登録ヲ詐称シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第二十一条 第六条第七条ノ届出ヲ其期限内ニ為サヽル者ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第二十二条 此条例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ数罪倶発ノ例ヲ用ヒス
第二十三条 第十六条ヨリ第十八条ニ至ルノ罪ハ登録商標主ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第二十四条 登録商標主告訴ヲ為シタルトキハ裁判官ニ於テ仮ニ其告訴ニ係ル商標ヲ附シタル商品ノ発売ヲ停止スルコトヲ得
1 本条例頒布以前使用スル商標ヲ専用セント欲スル者ハ本条例施行ノ日ヨリ六ケ月間ニ於テ其登録ヲ願出ツ可シ其願書ハ本条例施行ノ日ヨリ八ケ月間之ヲ留置其間ニ之ト牴触ス可キ願書到達セサレハ之ヲ登録ス可シ
2 若シ二人以上同一又ハ相紛ラハシキ商標ヲ同一種類ノ商品ニ専用センカ為メ登録ヲ願出ツル者アリ牴触スルトキハ其願書日附ノ前後ニ拘ハラス農商務卿ニ於テ其商標ノ使用最久シキト認定スルモノヲ登録シテ其他ヲ却下ス可シ
3 本条例第三条ニ依リ処分ス可キ願書ト雖モ本条例施行ノ日ヨリ八ケ月間之ヲ留置附則第一項ニ依リ願出ツルモノニ牴触スルトキハ其願書日附ノ前後ニ拘ハラス之ヲ却下ス可シ
4 前二項ノ場合ニ於テ願書ヲ却下スルトキハ其手数料ヲ返付ス