2008-05-11
接頭辞 homo ホモは、2個の骨格原子間へのメチレン基（-CH2-）の挿入を表す。挿入される原子の位置番号には、a,b,…が添えられる。メチレン基が環内に挿入される場合は環拡大（ring expansion) をもたらす。IUPACでは鎖の伸長にも適用できるが、CASではステロイドの側鎖にhomoを適用することは認められていない。
環内メチレン基の隣にさらにメチレン基が追加される場合、接頭辞 homo に添える記号は、IUPACでは挿入原子の位置番号とし、CASではそれぞれの環を示すアルファベット大文字の記号をイタリックにしたものである。挿入原子の位置番号は、隣のメチレン基の位置番号（同じ環内に複数のメチレン基が連続した箇所では、そのうち最大の位置番号）にaを添えたものである。
橋頭原子間、または17位に側鎖がある場合のC13-C17間にメチレン基が追加される場合、挿入原子の位置番号は、IUPACでは挿入位置の位置番号のうち小さい方にaを添えたものとされるが、接頭辞 homo に添える位置番号は、挿入位置を明確にするため、複合位置番号（挿入位置の両側の位置番号のうち小さい番号を先に記し、大きい番号を丸カッコで囲んだものを続け、その後にaを添えたもの）とされる。CASでは挿入原子の位置番号は慣習的に決まっているようである。接頭辞 homo に添える記号は、IUPACでは、挿入原子の位置番号（必ず複合位置番号を用いる）とし、例えば5(10)a-homo [IUPAC] は、C5-C10間への挿入を表す（その挿入原子について言うときは5a位と略してよい）。CASでは挿入位置に関わる環の記号の後に、挿入原子の位置番号を丸カッコで囲んだものを続けたものを接頭辞 homo に添える。例えばAB(10a)-homo [CAS] は、A環とB環の縮合位置にメチレン基が挿入され、その位置番号が10aとなることを表す。詳しくは下記の具体例を参照のこと。
2個以上のメチレン基が挿入される場合（dihomo ジホモ、trihomo トリホモ、…など）、挿入原子の位置番号には順次a,b,…を添える。例えば、C4-C5間に2個のメチレン基が挿入された場合は、4a,4b-dihomo [IUPAC]、A-dihomo [CAS]となり、C13-C17間に2個のメチレン基が挿入された場合は、13(17)a,13(17)b-dihomo [IUPAC]、D(17a,17b)-dihomo [CAS] となるが、CASではメチレン基2個までという制限がある。
次に、具体例を示す。IUPACとCASで挿入原子の位置番号が異なる場合は、CASの場合を赤色で示した。
| 通常 |
| 4a-homo [IUPAC]
4a-ホモ A-homo [CAS] A-ホモ |
| 7a-homo [IUPAC]
7a-ホモ B-homo [CAS] B-ホモ |
| 12a-homo [IUPAC]
12a-ホモ C-homo [CAS] C-ホモ |
| 17a-homo [RF] (R = H のとき)
17a-ホモ D-homo [CAS] (R = H でも R ≠ H でも) D-ホモ |
| 16a-homo [RF] (R ≠ H のとき)
16a-ホモ |
| 13(17)a-homo [IUPAC] (R ≠ H のとき)
13(17)a-ホモ D(17a)-homo [CAS] (R ≠ H のとき) D(17a)-ホモ |
| 5(10)a-homo [IUPAC]
5(10)a-ホモ AB(10a)-homo [CAS] AB(10a)-ホモ |
| 8(9)a-homo [IUPAC]
8(9)a-ホモ BC(8a)-homo [CAS] BC(8a)-ホモ |
| 9(10)a-homo [IUPAC]
9(10)a-ホモ B(9a)-homo [CAS] B(9a)-ホモ |
| 13(14)a-homo [IUPAC]
13(14)a-ホモ CD(13a)-homo [CAS] CD(13a)-ホモ |
| 8(14)a-homo [IUPAC]
8(14)a-ホモ C(14a)-homo [CAS] C(14a)-ホモ |
上述したように、IUPACでは側鎖の伸長にも接頭辞 homoを用いることができる。
メチレン基の隣に、またはメチル基のC-H結合に、メチレン基が挿入される場合、挿入原子の位置番号は、隣のメチレン基またはメチル基の位置番号（複数のメチレン基が連続した箇所、または複数のメチル基から選択すべき箇所では、そのうち最大の位置番号）にaを添えたものである。それ以外の位置では、複合位置番号を用いる。
天然物の母体骨格のメニューに戻る